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[Einstein@Home] Einstein@Home のすすめ

BOINC ベースのプロジェクトのひとつに Einstein@Home があります。 Einstein@Home はアメリカのレーザー干渉計重力波検出器(LIGO: Laser Interferometer Gravitational wave Observatory)等を使って重力波を検出するための観測プロジェクトで, 私たち一般の参加者はおうちにあるコンピュータの空き時間を使って観測データを解析する部分を請け負います。 SETI@home と同じくおうちで参加できる天文観測プロジェクトです。 このプロジェクトは2005年から開始しています。 今回は遅まきながら Einstein@Home について説明していきたいと思います。

2005年は「International Year of Physics (国際物理年)」あるいは「World Year of Physics (世界物理年)」 でした(日本語の情報)。 別名「Einstein Year」とも呼ばれています。 何故2005年が「国際物理年」で「Einstein Year」かというと, ちょうど百年前の1905年がアインシュタイン博士によって

  • 光電効果の理論
  • 特殊相対性理論(当時は「相対性原理」と呼ばれていた)
  • ブラウン運動の理論

という3つの業績が著された「奇跡の年」だからです。 昨年はアインシュタイン博士に関する TV 番組や書籍がいくつかありました。 ネットでも以下のような記事が公開されています。

他にも色々なイベントが催されたようですが, そのうちのひとつが Einstein@Home プロジェクトです。

Einstein@Home では重力波の直接検出を目指します。 重力波はアインシュタイン博士の「一般相対性理論」で予言されている現象です。 1974年に連星パルサーの公転周期の軌道が短くなっていく現象が観測され, これが重力波の存在を示す間接的な証拠となっています。 (連星パルサーは重力波を放出することによりエネルギーを失い公転周期が短くなるとかなんとか。 で,実際に重力波があるとして計算した周期減少率が実際の観測と誤差の範囲内で一致したとかなんとか。 ちなみにこの研究を行ったグループは1993年にノーベル物理学賞を受賞しています)

Einstein@Home では LIGO などの重力波干渉計でパルサーを観測します。 パルサーとは高速回転する中性子星のことで周期的(数ミリ秒から数秒)に電磁波(電波や可視光線あるいはX線など)を放射します。 もし完全に軸対称形でないパルサーがあればそれは重力波を放出するはずです。 ただし, もし重力波が放出されているとしてもそれは非常に微弱なものであろうと予測されています。 ノイズに埋もれた小さな重力波シグナルを検出するのには膨大な計算が必要です。 そこで「膨大な計算」の部分を私たちのコンピュータの空き時間を使って分担して行おうというわけです。 重力波干渉計はアメリカの LIGO (LIGO Hanford Observatory (LHO)および LIGO Livingston Observatory (LLO)の2箇所あります)以外にもドイツの GEO600 のデータも使われるようです。 日本にも TAMA300 とか LISM (PDF)とか CLIO とかあるようですが, 参加しないんですかねぇ。

さて, Einstein@Home に参加するにはプロジェクトのページからアカウントを作成します。 BOINC クライアントの 5.2 以降でしたらクライアントから参加できます。 プロジェクトの URL に http://einstein.phys.uwm.edu/ を入力してください。 BOINC では複数のプロジェクトを稼動させられます。 またどちらかがメンテナンスでワーク・ユニットがもらえない場合でも, もう一方が稼動していますのでコンピュータ・リソースを無駄なく活用できます。 例えば SETI@home に60%,Einstein@Home に40%割り振るといったこともできます。 これらの設定は User Preference で調整します。 User Preference の内容は SETI@home の時とほぼ同じです。 「BOINC/SETI@home 移行の手引き」の解説が役に立つと思います。

Einstein@Home では既に Club-HUAA チームを作成しています。 Club-HUAA のページから「Join」してください。 Club-HUAA としては Einstein@Home への参加もチームへの参加も任意です。 Einstein@Home は SETI@home よりもワーク・ユニットあたりの解析に時間がかかります(SETI@home の2倍弱くらい)。 コンピュータ・パワーに余裕のある方のみ参加されるほうがいいと思います。

参考:

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