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「Current Progress Summary」 の歩き方

SETI@home オフィシャルサイトで提供されている 「Current Progress Summary」 は, プロジェクト全体の進捗状況を示す非常に有用なページですが, 進捗に応じて動的に変更されるページであるため日本語化が難しいページでもあります。 そこで日本語圏の方々が 「Current Progress Summary」 をチェックする際に参考になるようにこのページを立ち上げてみました。 お役に立てれば幸いです。

信号解析の5つのフェーズ

SETI@home による電波信号の解析は以下の5つのフェーズに分かれています。

  1. データ収集 (Collect Data)
  2. 候補となる信号の検出 (Find Candidate Signals)
  3. 解析結果の正当性チェック (Check Data Integrity)
  4. RFIの除去 (Remove Radio Interference)
  5. 最終候補となる信号の確認 (Indentify Final Candidates)

もしこのフェーズを全て通過したデータが存在する場合, 追認のための再観測を行い, 更に詳細な解析が行われることになるでしょう。

それでは, それぞれのフェーズについてひとつづつ見ていくことにします。

データ収集

現在 SETI@home で対象となっているデータは アレシボ観測所で収集された観測データです。 SETI@home ではできるだけ広範囲を何度も捜索する必要があります。 そこで,アレシボ電波望遠鏡の受信部に SETI 専用の受信機を 「便乗」 させて貰い, 望遠鏡が稼働している間は (SETI のために望遠鏡を占有することなく) SETI のデータも同時に収集できるようになっています。 こうして集められたデータ (35GB/day もあります) は数学的な手法で小さな小片 (WU: Work-Unit) に分け, 最終的に皆さんのクライアントソフトに届けられます。 (この辺の詳しい話については 「SETI@homeはどのように動作するか」 を参照してください)

「Current Progress Summary」 では, この収集フェーズの進捗状況 (捜索範囲の何割をカバーし何回データ収集したか) を公開しています。

更に 「Collect Data」 のページでは, アレシボ電波望遠鏡の観測方向について, 1日単位,5ヶ月単位,そして観測開始からの全軌跡をプロットした星図を公開しています。 また,天球上のある地点について何回観測データを得られたか,についても公開しています。 (星図の見方については 「星図の見方 (超初心者編)」 に簡単にまとめました。参考にしてください)

「Calendar」 ではアレシボ電波望遠鏡での観測状況が月単位でまとめられています。 また現在参加者に配信中のデータも示されています。 また 「recent workunit accumulation」 ではWUユニットの生成状況がグラフで示されています。

候補となる信号の検出

このフェーズは, 私達参加者がクライアントソフトを使って行う解析フェーズです。 私達参加者はサーバからもらったWUを解析し, Spikes, Gaussians, Pulses, Triplets といった (自然のものではない) 特定の信号パターンがないか探します。 そして解析結果をサーバに送り返し次のWUをもらう, というプロセスを繰り返します。 (解析についての詳しい情報は 「SETIの電波探査」「SETI@home スカイサーベイについて」 が参考になります)

送り返された結果は集計され, 「Current Progress Summary」 に簡単な集計情報が表示されます。 更に 「Finding Candidate Signals」「Current Total Statistics」 では更に詳しい統計情報を見ることができます。

個人の解析情報は 「Individual User Statistics」 で, グループの解析情報は 「Group Statistics」 で見ることができ, WU処理数によるランキングも公開されています。

「Power Clickplots and Skymaps」 では日単位で Spikes のウォータフォール図 (ズーム可能) とアレシボ電波望遠鏡の観測方向の軌跡を見ることができます。 (ウォータフォール図やクリックプロットについては 「ニュースレター #7」 を参照してください)

解析結果の正当性チェック

集計された解析結果は簡単なチェックにかけられます。

参加者のコンピュータの状態 (ハード/ソフトウェア構成やメンテナンス状況) によっては間違った結果を返すことがあります。 (非常に低い確率ですがなんの理由もなくコンピュータが間違った計算をすることはあり得ます。 これは通常の運用を行う場合には全く支障はないのですが, SETI@home のような大規模で計算集約的なプロジェクトでは問題が表面化します) またこのようなプロジェクトでも人数としては僅かながら不正を働く者もいて, その場合には大抵間違った結果を送り返そうとします。

これらの間違いを発見するために, 同じWUを複数のユーザ/プラットフォームで処理してもらい, 結果を突き合わせて結果の正当性をチェックします。 (詳しくは 「ニュースレター #8」 を参照してください)

「Current Progress Summary」「Testing Data Integrity」 では, この検証フェーズの進捗状況を公開しています。

RFIの除去

「候補となる信号の検出」 フェーズで検出される信号パターンのほとんどは地球起源のノイズか RFI (Radio Frequency Interference: 電波干渉または受信障害) です。 また望遠鏡性能をテストするための 「バーディ」(birdies) と呼ばれるテスト信号の可能性もあります。 このフェーズでは, そういった地球起源の信号パターンをそうでない (地球外の?) ものと分離し除去します。 (詳しくは 「ニュースレター #6」 を参照してください)

「Current Progress Summary」 では, この除去フェーズの進捗状況を公開しています。

最終候補となる信号の確認

このフェーズでは フェーズ1から4を通過した信号パターンについて 「持続性の突合せ」(Persistency Checking) を行います。 これは天空の同じ方向の異なる時刻で同じ信号パターンが検出されていないかチェックするものです。 ある天空上の方向から同じ信号パターンが続けて観測されていれば,その信号パターンについての信頼性は高まります。

「Current Progress Summary」 にあるこのグラフの 「4+」 は同じ信号パターンが4回以上観測されている観測点の数を示しています。 現在その数は0ですが, 4回以上検出するデータがあるなら, いよいよ追認のための (別の観測システム等を使った) 再観測が行われることになるかもしれません。 (持続性のある信号については 「ニュースレター #9」 を参照してください)


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